地名からたどる創作民話


 地図にかかれた地名から想像して作ったお話をおとどけします。



大分県日田市天瀬町女子畑(おなごはた) 1/25,000地形図熊本1号の1「日田」
 

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大分県 「女子畑」

(おなごはた)




 あたたかなこの国では、男は畑仕事にせいを出し、女子(おなご)は家事(かじ)にせいを出して、なにふじゆうなく、くらしていたそうな。
 ところが、この年は天気がわるく、春になっても寒い日が続き、夏には雨が多く、畑の作物はごく少ししか、しゅうかくできなかったんだと。
 だからこの年は、村人たちはひもじい思いをしながら冬をこしたそうな。

 そして、よく年の春がきて、男たちはいつものように畑仕事を始めたんだが、この年も、寒い日がいつまでも続いたそうな。
 そこで、ひもじい小さな子どもをかかえる女たちは、こういって、男たちにうったえたそうな。
 「私たちにも、畑仕事をさせてくれねか」
 女たち(おなご)は、一つでも多くの豆や野菜をしゅうかくしたかった。

 しかし、この村では、「女が畑に出ると、“畑の神”がおこる」といういいつたえがあってな。男たちは、ゆるさなかったそうな。
 「とんでもないことだ、女子が畑に出ると、畑の神がおこって不作(ふさく)になる」
 「ばかなことをいうでない」
 「これ以上不作になったら、うえじにだ」
 と、男たちは、口ぐちに反対したそうな。
 しかたなく、女たちは今までどおり、家事にせいを出したと。

 ところが、天気は、かいふくしなかったんだな。寒い日が続き、男たちの作る豆や野菜は立ちかれてしまった。

 男たちは、わずかに取れた豆と山の木の実をさげて帰ってきたのだが、その男たちのすがたは、遠くから見てもさびしそうに見えたそうな。ところが、「おかえり」、「お父さん、お帰りなさい」と、女や子どもたちの元気な声が、仕事から帰る男たちをむかえてくれたそうな。
 「どうして、おまえたちはそんなに明るくしていられるのだ?」
 男たちはたずねたそうな。
 「お父さん、大じょうぶ」
 「私たちがなんとかします」
 「・・・・・」
 「これを食べましょう」

 女たちが、とつぜんさし出した大きないもの山に、男たちはおどろいたんだと。
 「どうしたのだ?」
 「ひみつの畑でね!」

 女たちは、男たちにないしょで、畑をたがやし、いもをうえていたんだと。
 家事(かじ)のあいまの畑仕事だから、すこししか手をかけなくてもせいちょうする、いもをうえたのがさいわいして、わるいてんこうの中でも実をむすんだと。
 「これで、ひもじい思いをしないですむ」
 「ありがとう、ありがとう」
 と、男たちは女たち(おなご)に大へんかんしゃしたそうな。

 それからというもの、この地方では女たちも畑仕事をてつだうようになり、男たちも家事をてつだうようになったんだと。
 そして、女たちが男たちにかくれてたがやしていた、畑のあったあたりを、今では女子畑(おなごはた)とよんでいるとさ。
 もちろん、女子たちは大のいもずきだー。


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